初めて転職した際の面接体験です。
それまで地方公務員として十数年間行政に携わっていましたが、家庭の事情により転勤先の大阪を離れることが出来なくなり、人事異動で地元への転勤を命じられてやむを得ず退職し、転職せざるを得なくなりました。
そこで直ぐにでも家族を養っていける給料を貰えるところとして、どのような職業なら自分に出来るだろうと考えた末にタクシー乗務員を選びました。
新聞広告の中のいろいろなタクシー会社の求人広告の中から、ある会社に目星を付けました。そこの会社は大阪に来てお客さんとして乗ったタクシーの中で、乗務員さんの印象が一番良かった会社です。
電話で求人の申し込みをすると簡単に志望動機と略歴を聞かれ、ちょっと沈黙の後、面接日、面接時間を指示されました。この時のちょっとの沈黙の意味が面接の際の面接官の言葉で分かりましたが、それは後で話します。
いよいよ面接当日
どのようなことを聞かれるのか全く想像も出来ませんが、とにかく正直に答えようと思って面接に臨みました。廊下で待っていると名前を呼ばれたので部屋の中に入ると、年配の人事課長と中年の指導係長という肩書きの2人が居られて、主に指導係長が私に質問をしました。
家庭環境、今までどんな仕事をしていたのか、退職の理由、働き場所が決まらなければどうするのか、志望動機などなどでした。私は何も飾ることなく正直に答えました。
そして人事課長から衝撃の言葉
するとそれまで黙って指導係長と私のやりとりを聞いていた人事課長が、初めて声を出し次のように言いました。
「貴方の経歴、家庭環境、志望動機等を一通り聞かせていただきました。私はこの業界に数十年おって、いろいろな方のこの業界への転職に関わりその方の行く末を見て来ましたが、正直に申し上げますが貴方では務まらないと思います。
タクシーにはいろいろな方がご乗車されます。自分を殺し、時には言葉は悪いですが馬鹿にならないといけない時もあります。あなたの経歴ではそれは無理ではないでしょうか。」
と言うものでした。そう言われても私には後がありません。必死でやります、出来ますと訴えました。私の言うことに根負けしたのかどうか分かりませんが、2人で相談した後、前の職場を退職したら直ぐ来て下さいと言って下さいました。
ああ採用された。心から良かったと思いました。
それにしても面接の時に人事課長さんから言われたあの言葉には衝撃を受けました。心の中でタクシー乗務員の仕事を少し甘く見ていたところがあったからです。あの時の言葉は絶対忘れまいそう思っています。